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小説とルポの違い――小説とは何か?比較をして初めて見えたもの、その2

自分が小説を書いてみたいと思うようになってから、小説とは何かと考える機会が多くなった。

今日は小説とルポタージュの違いを、見比べたことを2回に分けて書いてみたいと思う。

今日は昨日の続き。

その1はこちら小説とルポの違い――小説とは何か?比較をして初めてみえたもの、その1

 

ルポと小説の比較

「ベトナム戦記」(1965)ルポタージュと「輝ける闇」(1968)小説の両方の著者は開高健である。

私はこの二つを比較ことで、小説とはどんなものかと、また少し理解ができた。

(※以下の京都造形芸術大学に文芸コースの授業「テーマで読む文学」で取り上げられたものである)

 

ルポタージュ

「ベトナム戦記」

沼地を越えようとしたとき、さいごのライフル銃と自動銃のすさまじい掃射が私たちの背をおそった。私の直後、秋元キャパの真横を走っていたベトナムの大意が右肩に貫通銃創をうけてたおれた。私はバク(バック)を捨てて走った。

「開高さん、バクおちた、バクおちた!」

「いいんだ、いいんだ、捨てといてくれ!」

後ろへ叫んでおいてから私はくらいジャングルのなかを敗走する兵隊といっしょになってひたすらまえへまえへと走っていった。

 

上述は、現状を的確に記しているルポタージュである。

次に書くのは、これを元に表現力や想像力、技術を用いて小説として描かれたものだ。先に言ってしまうと驚くぐらいに違う感度の高い文章になっている。ちょっと長いけど。

 

小説

陽が消えかかり、燦欄はすでに壊滅して空は夜に犯され、沼は暗かった。

その全景をふりかえった瞬間、思わず眼を閉じずにはいられいライフルの底力のある掃射音が襲った(中略)弾丸が夜をつらぬき、ひき裂き、そそりたつ巨人の腿や腕のような幹をかすめ、乱反射して跳ね回った(中略)

ポケット本とタオルしか入っていないバグが一トンの石灰袋のようであった。

(中略)それを捨てれば鎧が剥落するような気がしてならないばかりに、バグをつかんだり、握ったり、撫でたりしてきたのだったけれど、一滴が揮発した瞬間に自尊心が崩壊した。

人を支配するもっとも隠微で強力な、また広大な衝動、最後の砦は自尊心であった。

私はバグを持っているあいだ何がしかの自信をほじしているかのように感じたが、それが砕けて溶けてみると、一瞬の自由が閃き、和んだ。

(中略)私はバグを捨てて、口をあけて走った。

(中略)右、左を凶暴な、透明な力がきしったり、唸ったりしつつ擦過し、木の幹が音をたてた。

私は閉じて、こわばった。耳いっぱいに心臓がとどろき。私は粉末となり、山の中で潮のように鳴動していた。

私は泣き出した。涙が頬をつたって顎へしたたり落ちた。小さな塩辛い肉の群れに無音でおしわけられ、かきのけられ、卑劣や卑しさをおぼえることもなくそれを鈍くおしかえし、つきかえしつつ私は森で駆け込んでいった。

しめやかな苔の香りが濡れた頬をかすめた。まっ暗な、熱い鯨の胃から腸へと落ちながら私は大きく毛深い古代の夜をあえぎ、あえぎ走った。(「輝ける闇」を抜粋引用)

 

解説

私は、ルポタージュと小説とではこんなにも字数が違うのかと、先ずは単純に驚いたのだが、あとに続く、先生の説明では、バックを自尊心になぞらえて、捨てたことで鎧が剥落するような、一方で一瞬の自由が閃き、和んだとあるが、生命の危機に直面した状況化で、自尊心の崩壊は精神の崩壊を意味している。

こういった一瞬の微細な心理状況を、作家は見逃さずあたかも拡大鏡でみたように叙述していると説明があった。

他にも、毛深い古代の夜と熱い鯨の胃から腸へと――は関係があり。旧約聖書の「ヨブ記」が背後に隠されているそうだ。

 

まとめ

こうしたことから、小説は書くための基礎的な技術だけでなく、読み物として深みを出すためには、的確な比喩を使うことや、誰もが経験したことのある日常を表現として使うことも必要であると同時に、描写をするにも単に技術を真似をしている小説もどきとは、本質的に違うのだと理解できたように思う。

ただ個人的には、描写が多い小説は眠くなってしまうので、使うときは、物語の重要な役割を果たす場面をきっちり設計した上で使いたい。

 

てか、偉そうに書いていますが、まったくできていないし、眠たくなっちゃうのは探究心が低いんだというだけかな。脳みそのキャパ越えとかもあるなー。

 

あとがき☆☆☆

本来は2回に分けずに、一つに続けて書くべきでしたが、日曜日に購入したカップケーキの型をどうしても使いたくなってしまい、ブログ作りの時間が減ってしまいました。笑

でーも、お陰で満足できるおからマフィンが出来上がったのでした。冷凍できるので、いろんなパターンを作って、市販のお菓子はできるだけ食べるのは控えようと考え中。

次回は、おからから作ってみよう!

写真はゴマペーストを混ぜた生地で、ピーナッツジャム&アーモンド、レーズンチョコレート、ゴマ生地プレーンの三種。もう半分食べてしまったけれど、罪悪感一切なしで最高~。

小説とルポの違い――小説とは何か?比較をして初めて見えたもの、その2

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