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短編小説『その人』
- CATEGORY お勉強系
- UPDATE : 2015.10.07
- LAST UPDATE : 2015.10.07
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大学の課題で書いた短編小説です。
提出日は6月、字数は3,000字ぐらいの指定があったと記憶しています。人生初書いた短編でした。先生からの採点結果はB評価三名、A評価一名でした。笑
いま改めて読んでみると、薄っぺらな小説になっていますが、加筆修正して、記念にアップしておきます。
このときから三ヶ月が経過しているけれど、少しは成長しているのだろうか?
ちなみに内容はフィクションです。
「その人」
その人は私の予想より遙かに早く帰ってきた。
その日の夕方近くに、仕事の投資を得るための商談で出掛けて行ったときの表情と、何時に戻るか分からない、と聞いたことから、戻りは夜中になるのだろうと予想していたからだ。
その人が戻ってきてすぐに、念のために作っていた夕食はカレーだと言うことと、ご飯が炊けていないことを伝えてから、ふと私はその人の食の好みを聞いていなかったことに気付き、牛スジ肉のカレーは食べられるかと確認した。
その人はどんな物かわからないので、食べられないかも知れないと言ったすぐに、食べず嫌いなだけで、食べられるかも知れないと言い直した。続けてカレーの辛さは普通が良いと言った。
そしてできあがりの時間を確認すると、三十分ばかり車に行って仕事の電話をしてくると言い、再び出て行ったのだった。
食事の準備をしようと、手元を慌ただしくしながら、電話の相手はもしかしたら女性かもしれないと、ふと考えた。
三十分は過ぎていただろうか、ちょうど食事の準備が整った頃に、その人は戻ってきてテーブルに着くと、無言で食べ始めた。
味がどうかも言わないし、スジ肉がどうとも言わないのだが、ほどなくして、その人の額からたくさんの汗がしみ出ているのを見て、辛い物が苦手な事だけは、知ることができた。
その人は唐突に、食前に話してきた電話の相手が、仕事仲間であり高校時代からの親友だったこと、その彼の浮気相手である四十歳の女性が妊娠し、どうしても産みたいと懇願されたと言うことを話し出した。
「いやー俺の親友が大変なことになってて、なんて言ってやればいいのか、分からなかったよ。認知をしたらどんな問題があるのかなー?そいつ新婚なんだよね」。
認知も求められたが、妊娠したことも信じられないし、子供の父親が自分なのかも疑わしい、そして認知をしてしまったら、どんな問題が起きるのだろうかという話が、展開されていった。
私は、自分と年齢の近いその女性の心理状態を考えながら、代弁してやりたいような思いが出てくる。
女性側の気持ちは十分に理解出来る。
それでもここでは顔も知らない四十歳の女性の気持ちを思いやるよりも、その人の親友側の心情を考えたほうが、正解なのだからと黙って聞いていた。
その人は饒舌になっていたが話の内容とは裏腹に、表情はまったく変化をしていない。ただ、今日起きている問題のあらすじが、何処からか借りてきた音声のように流れている。
食事が一通り終わると、その人は今夜も泊まっていくと言っていた当初の予定を変更して、仕事と親友が心配だからと言って、帰ると言った。
何も読み取れないその人の表情から、単に私と一緒に過ごす時間が嫌になったからではないかと思えたけれど、ある法則[i]によると人は、見た目・表情・しぐさ・視線から、なんと五十五%もの情報を得ているという。
表面的なことから相当量を得ているわけで、それが得られないと一抹の不安を感じるのだろうとポジティブに思い直したが、そのすぐに、既に私も騙されている事があるかも知れないと、少しばかり不安になる。
そして先日投資用に預けた、三口分の行方を聞きたい思いに駆られたけれど、何か聞いてはいけない、聞かない方が賢明に思えて、ただその人を見送った。
[i] 天使と悪魔のビジネス用語辞典『メビアンの法則』
話者が聴衆に与えるインパクトには、三つの要素があり、それぞれの影響力を具体的な数値で表した法則。アメリカの心理学者アルバート・メラビアンが一九七一年に提唱した。「3Vの法則」「7138155ルール」とも。http://www2u.biglobe.ne.jp/~hiraki/d74.htm
あとがき☆☆☆
返却されてきたレポートのコメントをきちんと読んで理解する気になれなかった。
書かれている内容で落ち込むのが嫌だったからだ。
でも、今朝読み返して、ものすごく納得してしまった。
厳しいことは書いてあるけれど、大学で学ぶことにして本当に良かったと思えた。
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